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コーヒーとジェンダー、歴史におけるコーヒーと女性の関わり

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コーヒーとジェンダー、歴史におけるコーヒーと女性の関わり

コーヒーの歴史を紐解いていくと、その背景にはしばしば社会的なジェンダーの視点が見え隠れします。カフェが公共空間として発展していく過程や、コーヒー生産の現場、家庭内での消費の在り方など、それぞれの場面で女性たちはどのように関わってきたのでしょうか。

本記事では、歴史的な視点から、コーヒーと女性の関係を多角的に掘り下げ、そこに潜む社会の構造や変化の兆しを読み解いていきます。

1. コーヒーハウスと「男の空間」

17〜18世紀、ヨーロッパにおけるコーヒーハウスは、知識人や商人たちの社交・議論の場として栄えました。ロンドンやパリ、ウィーンなどの都市では、コーヒーハウスが新聞、経済、政治の情報が行き交う「公共圏」の象徴とされ、民主主義や啓蒙思想の萌芽を育んだ場とも言われています。

しかしながら、当時のコーヒーハウスは主に男性の空間であり、女性の立ち入りは原則として許されないか、きわめて限定的でした。女性は客としてではなく、給仕や厨房での労働者として関わるのが一般的でした。

18世紀のイギリスでは、女性たちが「夫がコーヒーハウスに入り浸るせいで家庭が崩壊する」と嘆き、コーヒー反対請願を出した記録も残っています。これは単なる家庭の問題ではなく、公共空間から女性が排除されていた時代背景を反映しているのです。

2. 家庭におけるコーヒーと女性

一方で、19世紀に入るとコーヒーは家庭内での飲み物としても普及していきます。とりわけ都市部の中産階級では、朝食や来客時の一杯としてコーヒーが定着。家庭でコーヒーを淹れることは、主婦の役割とされるようになっていきました。

この流れの中で登場したのが、コーヒー器具の進化です。たとえば、ドリップ式やサイフォン式など、扱いやすさや見た目の美しさが重視されるようになった背景には、「女性でも使いやすいように」という意図が含まれていました。

つまり、コーヒーは家庭に取り込まれることで、女性の生活と強く結びついていったのです。家事の一部であると同時に、もてなしの象徴でもあり、家族との団らんを演出する要素としても重要視されました。

3. 生産地で働く女性たちの存在

コーヒーは嗜好品である一方、その生産には膨大な労働力が必要です。特に中南米、アフリカ、アジアの生産地では、収穫・選別・乾燥など多くの工程において女性たちが欠かせない役割を担っています。

たとえば、エチオピアやルワンダなどの東アフリカ地域では、女性が農園での作業の7割以上を担っているとされます。しかし、長いあいだ「労働力」としては評価されても、「経営者」や「所有者」としての地位を与えられることは稀でした。

こうした状況に対し、近年ではフェアトレードや女性主導のコーヒープロジェクトが広まり、女性農家への技術支援や資金提供、販売のサポートなどが積極的に行われています。たとえば「International Women’s Coffee Alliance(IWCA)」のような国際ネットワークは、女性の自立とリーダーシップを後押しする活動を展開しています。

女性たちが生産者として認められることで、家計の安定だけでなく、子どもの教育や地域社会全体の発展にもつながっているのです。

4. カフェ文化と女性の自己表現

20世紀後半以降、とくに都市部ではカフェが「誰もが集える場所」として開かれた空間になり、女性たちもコーヒー文化の主役として存在感を増していきます。

たとえば1950〜60年代のフランスやアメリカでは、カフェが若い女性作家やアーティストたちの創作の場となり、そこから多くの文学・音楽・映画が生まれました。現代においても、カフェは女性の起業、デザイン、ライフスタイルの発信源としての機能を果たしています。

また、コーヒーを媒介にしたサードウェーブコーヒーの広がりの中では、女性バリスタやロースターの活躍も注目されています。SNSやイベントを通して自らの哲学や美学を表現し、新しいロールモデルとなる女性たちも増えてきました。

「美味しい一杯を届けたい」という情熱のもと、ジェンダーにとらわれず実力を評価する風土が広がりつつあります。

5. 現代における課題と希望

とはいえ、コーヒー業界全体を見渡すと、女性が直面する課題はいまだ多く存在します。農園経営における資産アクセスの難しさ、都市部における昇進や起業の壁、家庭と仕事の両立の困難さなど、ジェンダーに根差した構造的な課題は解決には至っていません。

その一方で、消費者側の意識の変化も追い風になっています。単に「美味しいコーヒー」だけでなく、「誰がどのように作ったか」を知りたいというニーズの高まりが、女性たちの声に光を当てつつあります。

持続可能性と倫理的な調達が重視される時代において、女性が中心となるコーヒーブランドや、女性生産者の豆を選ぶ動きが広がっているのは、社会全体の価値観が変わり始めている証拠とも言えるでしょう。

まとめ|一杯のコーヒーに込められた「誰かの物語」

コーヒーは世界中で愛される飲み物であると同時に、そこには数百年にわたる人々の関係性が織り込まれています。女性は長くその背景に隠れていた存在でしたが、いまやその姿は徐々に前面に現れつつあります。

私たちが日々楽しむ一杯のコーヒー。その一杯には、収穫の現場で汗を流す女性の手、家庭で静かにドリップを淹れる母の姿、そして夢を持って起業したバリスタの物語が込められているかもしれません。

ジェンダーの視点からコーヒーを見直すことで、味だけではない、より深く豊かな「コーヒーの物語」が見えてくるのです。

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